旧帝大ウォッチャーとしては見逃せないニュースがあった。

世界トップレベルの研究力をめざす「国際卓越研究大学」の最終候補が、東京大と京都大、東北大の3校に事実上、絞られたことがわかった。審査をする文部科学省の有識者会議が来月にも現地視察をして、秋ごろに正式決定する。認定校には、政府が出資する10兆円規模の大学ファンドの運用益をもとに、1校あたり年に数百億円が支援される。この制度は、国際的に戦える研究力を実現し、世界から優秀な人材を集められる大学をめざすもの。昨年12月に公募を始め、今年3月末に締め切った。(2023.6.28朝日新聞)

研究にはまずお金がかかる。とくに理系分野の場合は、莫大な設備投資をしなければ戦いにならない。ノーベル賞を取ったスーパーカミオカンデには100億円以上投じられていたというのは有名な話だ。紙と鉛筆さえあれば研究が成立する法学部や文学部とは全く性質が違う。理系分野で一番予算がかからないのは数学かもしれない。フェルマーの最終定理を証明したアンドリュー・ワイルズはコンピューターをほとんど使わず、脳内だけで論理を構築していたという。四色問題をコンピューターが証明してしまったように、最近は数学においても機械が活躍する場面が増えてきたとはいうものの、物理学や化学などに比べれば微々たるものである。

国の基金から毎年最大600億円を25年連続でもらえるという今回の企画は、最先端研究のための予算獲得を目指す大学にとっては垂涎の的であった。旧帝大を中心に10大学が申し込んでおり、おそらく5大学くらいは認定されるのではないかとみられていたため、この時点で3大学に絞られたというのはかなり意外であった。特に東工大は、東京医科歯科大との合併女子枠の設定などここのところ目立つ存在だった。まあ間違いなく認定されるだろうというのが衆目の一致するところだったので、意外としか言いようがない。東工大の学長自身は明確に否定しているが、今回の東京科学大への変身も、この基金を獲得するためのステップ、とする見方は多かったので、落胆もひとしおだろう。

東大・京大はまあ順当として、東北大!というところに驚かれるかたも多いだろう。たしかに、偏差値だけを見れば旧帝下位グループに位置するのは事実だが、理系学部とくに光学や半導体関連(マイクロプロセッサー、光ファイバー、フラッシュメモリ、ハードディスク等々)の研究実績は日本トップクラスなのである。東日本大震災を契機に、「産学連携にいち早く取り組んできたことがいまの成長につながっている」(東洋経済)という。

この認定を受けた東北大は、国内外から優れた研究者や学生を引き付ける魅力的な環境をさらに提供できるだろう。また、国際的な研究交流や共同プロジェクトの推進により、新たな知見の創出やイノベーションの発展も期待される。ここ熊本県から東北大を受験する人は毎年極めて少ないが、研究内容から逆算して進路を考えるなら、もっともっと選択肢に入れてもよい大学なのだなと思う。

なお、阪大、名大そして九大も落選している。名古屋、福岡という地方の拠点として地域経済を引っ張る旧帝大への認定を期待していたのだが、今回は残念な結果に終わってしまった。「今回の認定を受けることはできませんでしたが、彼らの努力と挑戦は継続されるでしょう。東工大は謙虚さと責任感を持ちながら、自身の強みを活かし続けることで成長を遂げることができるでしょう」とChatGPTも言っている。旧帝大の挑戦と発展を、これからも見守っていきたい。

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