旧帝大の魅力その17~賛否両論?東工大の女子枠」で述べたように、入試に「女子枠」を設定する大学が続々登場している。東工大について述べた直後、ついに熊本大でも「女子枠」が導入されることが発表され、驚いた。熊大の新学部「情報融合学環」の学校推薦入試部分に8人分の女性専用枠を用意するという方式だ。

女子枠とはまた角度を変えて、女子大の工学部という概念にも注目である。6月25日付産経新聞によると、「昨年度は奈良女子大が女子大で初めて工学部を設置。来年度はお茶の水女子大に共創工学部(仮称)が新設される」という。

こうした動きの源泉となっているのは他でもない政府・文部科学省の方針である。「23年度入学の大学入試から、理工系分野での女子枠など、進学機会の確保に困難があると認められる受験生らを対象とした入試方法をもうけるよう各大学などに通知」(23.5.11朝日新聞)していることが、各大学への判断に大きく影響を与えているのだ。

女子枠の意義と課題について、一般論をChatGPTに述べてもらおう。

【女子枠の意義とメリット】女子枠は、男女平等を促進するための一時的な措置として導入されました。その目的は、男性が優位な領域で女性の参画を奨励し、均衡を取ることです。女子枠の導入によって、女性が本来持っている能力や才能を十分に発揮できる機会が与えられます。また、多様な視点や経験を持つ女性の参画により、組織や業界全体の創造性とイノベーションが向上する可能性もあります。

【女子枠の課題と注意点】一方で、女子枠にはいくつかの課題や注意点も存在します。まず、過度に依存することで男女平等の本質的な解決を達成できない可能性があります。また、女子枠の設置が逆に女性の能力を過小評価し、「特別扱い」や「ハンディキャップ」とのレッテルを貼ることも懸念されます。さらに、女子枠が一部の男性からの反発を引き起こし、対立を助長する可能性もあります。

昨年度の国立大出願者を見ると、学部別に男女比の明らかな特徴がある。上記産経新聞のデータによると、女子の比率が男子より高い学部・学科は1位:看護学科(92%)、2位:文学部、社会・国際学部(62%)、4位:薬学部(55%)であった。イメージ通りである。女性活躍という観点から将来の職業像が明確に見えやすい学部に、人気が集中していると考えられる。

反対に女子比率が圧倒的に低い学部は工学部であり、その中でも1位:電気・電子学科(7%)、2位:機械・航空学科(8%)、3位:通信・情報学科(12%)が上位となっている。いくら何でも低すぎる数字だ。多様性という観点からは、やはりこのままでいいとはいえない。なんらかのアファーマティブ・アクション(Affirmative Action)を採らねばならない、という緊急性は理解できよう。余談だが、3位に「情報」学科が入っていることが地味に気になる。新教科「情報Ⅰ」の導入が女子に不利にならなければよいのだが…

源泉となっている文部科学省の方針のさらなる源泉と考えられるのがポリティカル・コレクトネスいわゆるポリコレだ。ポリコレとは「政治的正しさ(Political Correctness)」の略語であり、社会的な表現や行動において差別や偏見を排除した言葉遣いや態度を促す理念を指す。SDGsと並んで、21世紀における重要な価値観となっているので、実生活においても入試においても、おおいに気を付ける必要があるのだ。

時代の要請とともに進化していく女子枠は、ジェンダー平等と多様性の促進を目指すための一助となる。その意義とメリットは確かと言えるが、あくまでも一時的な手法であるということにも気を付けねばなるまい。わが国全体の将来にわたる女性の参画と活躍を促進するためにも、女子枠を適切に活用することが求められる。

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