旧帝大はもちろん、英語も難問ぞろい。
難問は主に、1)構造把握の難しさ、2)内容把握の難しさから成るというのが代表的パターンでしょう。
1)に関しては、一文一文がやたらな長文で、関係詞や省略を多用していてあまり自然ではないような複雑な文章構造にしている。それを見抜けるか受験生に問う、という設問となります。これはまあ厄介なようでいて、実はそうでもない。トレーニングを積んだ高3生が深く考えれば解けるようになります。
真に難しいのは2)のパターン。そう、このタイトルに書いたように、「日本語訳してもその意味が分からない」という英文です。例を挙げましょう。著名な歴史家E.H.カーの文章。これは、京都大学でも一橋大学でも出題された問題です。大学教授を惹きつける何かがあるのでしょう。
History begins when men begin to think of the passage of time in terms not of natural processes― the cycle of the seasons, the human life span ― but of a series of specific events in which men are consciously involved and which they can consciously influence.
訳は取れそうですか?
この一文は、主語がHistory、動詞がbeginsの第Ⅰ文型。
ざっと訳してみると、
「人が時の経過を、季節の循環や人生の期間といった自然な過程としてとらえるのではなく、人が意識的にかかわり、影響を与える特殊な一連の出来事という観点で考え始めたとき、歴史がはじまる。」
こんな感じでしょうか。うん、われながら名訳。
この日本語が何を言っているのかが分かる受験生が、難関大に通るということです。「分かる」というのは、自分の言葉で言い換えることができるか、何らかの例示ができる、ということでしょうね。
私の理解はこうです。
→歴史は客観的な所与のものではない。後世のだれかが何かを意図する際に、ストーリーとして構成しようと考えて後付けで作られる。
この私の解釈が正しいかどうかはわかりませんが、ともかくE.H.カーの書物は興味深いので、難関大受験者ならばぜひ読んでおくべきですね。岩波新書とかでいいです。
余談ですが、難関大に出される複雑な構文は、第Ⅰ文型が多い印象です。文構造が把握しづらいなあと感じたときは、第Ⅰ文型を疑ってみてください。