日本一の大学・東京大学ですが、2020年代以降はますますそのレベルアップが加速しているように感じます。皮膚感覚だと、今の東大理Ⅰの難度は阪大医学部や東京医科歯科大医学科に匹敵するレベルに達していると思います。おそらくこれは、受験に詳しい関係者なら誰しもが同意するところでしょう。東大じゃなくて京大・一橋にしとこう~と思えば、信じられないほど判定も上がり、精神的にもラクになれます。
とくに壁を感じさせるのが、都会と地方の格差です。2022年合格者数ランキングのTOP20を見ると、東京(+横浜・千葉)で16校を占めるという有様。残りは関西(兵庫と奈良)が2校、九州(福岡と鹿児島)が2校で合計20。東京圏以外からシステマチックに東大合格者を出すのは至難の業、というのが最新の状況です。
それにしても、なぜこんなに東大が人気なんでしょうか。国際的な大学ランキング(信憑性あるかは別にして)の順位が特に上がったという話は聞きません。アジアで見ても、中韓に後塵を拝すところですので。メディア等の影響でいえば、クイズ番組の影響やテレビドラマの影響もあるにはあるのでしょう。長期的・社会的な視点としては、少子化の中で大学の淘汰が進むにつれ、各大学の真価があぶり出されてきているのかもしれません。
そして、東大であればひととおりすべての学問領域は取り揃えている、というのは大きいです。たとえば「恐竜の研究者になりたい」と思ったとして、現実的かつ最善の選択肢を考えれば考えるほど、東大行くしかないのか…となってしまうのです。古くは、官僚になりたいなら東大、でしたが、今は若干崩れてきているとはいえ、大筋では東大、ということは今もっていえるでしょう。やはりこの令和の時代にも、学問のデパートであり総合商社であるのは東大というわけです。
私見ですが、現役高校生が東大に通る条件というか、東大を目指せる条件というもののファイナルアンサーを書き出してみます。
・理系であれば、数学オリンピックや化学オリンピックで上位入賞するような一芸に秀でていること
・文系であれば、英語国語社会に圧倒的な力を持つことを前提に、数学を苦にしないこと。
というところでしょうか。圧倒的ってどれくらい?というと、英語なら帰国子女レベル。国語なら全国100位レベルとかです。
理系の人の場合は、国公立大学2次試験を目指す場合の通常メニュー(英語数学物理化学)に加えて、国語という大きな難関が立ちはだかります。ただし、かなり優秀な(都道府県トップクラス)人であっても、国語は「漢字をとりあえず書いて、あとはさてどうしようか」的なレベルでも理Ⅰに通ることはできますので、あまり深刻に考えなくてもよいかもしれません。
科目数がどうこうというよりも、単純に数学の難度、物理の難度、化学の難度、がすさまじいと思います。少々得意な程度では、手も足も出ない、そういう問題を揃えてきてくれます。だからこそ、オリンピックレベルで秀でていることが大きな一助となるのです。
文系の人の場合は、国公立大学2次試験を目指す通常メニュー(英語数学国語)に加えて、社会が加味されます。京都大・一橋大までなら社会一科目でよいのですが、東大は社会二科目です。この難関は想像以上に大きいものと考えてよいでしょう。でも、東大側の気持ちもわかりますよね。地理を辛うじて解いただけで入学してこないでくれ、と。学問としての普遍性を身に着けて入学してくるのならば、歴史(できれば世界史)の広範な素養くらいはないと、大学生になってからのレポートや議論が成り立たないのは必定でしょうから。
東大に通ったからといって、金銭的・生活的な安定には全く直結しません。卒業式でわざわざ学部長からそういわれます。しかしそういうことではなくて、単に学問が好きだ、と。本当に学問が好きだ、と。そういう人に東大は向いているし、東大を目指してほしい、と私はそう思います。