九州の高校ならではの慣例だった朝課外が転機を迎えている。ここ熊本県では2023年4月から、県立高校における朝課外がついに全面廃止となった。いつ頃から始まっていたのか正確な記録は残っていないというが、「1980年代にはあったと見られる」(3月9日付朝日新聞熊本版)とのことだ。正式な教育課程ではないので参加するかしないかは任意のはずだが、「実態は強制だ」(朝日)との指摘も根強くあったため、今の時代にそぐわないということで不満の声が高まっていたのである。

もちろん筆者も朝課外経験者である。1994年~97年と福岡高校に通っていたのだが、朝7:40から授業開始であった。福岡県では課外と呼ばず「補習」と呼ぶのだが、実態はもちろん強制参加であり、教科書の学習内容を当然のように先に進めていく容赦なき「正式授業」であった。筆者は福岡市民といえども海の中道の辺鄙な場所に住んでいたため、JRの都合よい電車がなく、補習に間に合うようにするためには朝6:18雁ノ巣駅発の電車に乗らなければならなかったのを覚えている。夏はまだいいものの、冬は本当に真っ暗で、寒風吹きすさぶ中、地獄やな~と毎日思っていた。3学期だけは補習が無いという慣例だったので、朝ゆっくり寝れることだけで富豪のようにハッピーな気持ちになっていた。

苦しかったのは親も教師も同じであった。弁当を作る母親は5時前に起きなきゃいけなかったろうし(購買のパンも美味しかったので毎日というわけではないが)、教師は教師で「中洲に飲みにも行けんとよ」とぼやいていた。登場人物全員にとって、本当に3学期だけが天国だったのである。

先日たまたまNHK福岡のニュースを見ていたところ、まさにこのテーマをやっていた。〝朝課外”をバリサーチ②「継続」か「廃止」か 県内トップ高校の決断ということでウェブ上にもきれいにまとめられているので是非ご覧いただきたい。「継続」の福高、「廃止」の修猷館!とこのライバル校が見事に分かれた対応をわかりやすく特集してある。なかなか賛否両論ある問題なので、継続するにも廃止するにも、相当な葛藤があったことだろうとは思う。

賛否両論とはいうものの、否定派のほうが圧倒的に多く、上記NHKの数字だと66%が反対賛成はなんとたった5%である。反対の理由は明確だ。皆の負担が重いことに尽きる。重い割に効果が出ているのか?という疑念も呈されている。2019年1月8日付朝日新聞によれば睡眠不足等の懸念から「米国では小児科学会が中高の始業を午前8時半以降にするよう求める声明を14年に出し、カリフォルニア州では8時半より早い始業を禁ずる法律策定の議論が進んでいた。英国や香港、韓国では始業時刻を遅らせる学校が出ていた」とあり、さらに九大教授の「過度な早起きは睡眠時間確保の上では問題。午前8時台の始業時刻なら早すぎるとは思わないが、それ以前の活動は避けるべきだ」という指摘も付記している。

総合的に考えて、課外は今の時代に合わない、と断言して間違いなさそうだ。

が、筆者の中では5%の賛成しかないにも関わらず勇気を持って継続の決断を下した福高にシンパシーを感じる部分は否定できない。「朝課外を希望しない子が自分たちで勉強できるのかなっていうのが不安でした」(上記NHK)という福高教師のコメントには、やはり考えさせられるものがある。筆者自身に置き換えても、無理やり朝の時間を作らされる環境にあったからこそ頑張れた、というのは間違いなくあるからだ。朝のんびり寝ているようだったら絶対現役合格はできなかったな、とまで思う。

朝課外の廃止が高校生の学力にどのような影響を与えてくるのか。これは長い目で見なければわからない。悪いとも限らない。事実、廃止した修猷館は、生徒の自主性・積極性が高まったと早速報告している。今後どういう流れになっていくのか大変興味深い。様々な角度から検証していきたいと思う。

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