医学部に強い九州の高校ランキング」に続いて、「東大に強い九州の高校ランキング」を見ていきたいのだが、その前に、全国にはどういったライバル校たちがあるのかを見てみよう。全体概要をつかんだ方が、九州の動向も楽しく見られるからだ。

ランキングをただ上から眺めるだけなら、各種週刊誌やウェブサイトでもいくらでも見られるので面白みはない。今回は、本Blogならではの切り口ということで、筆者なりの分類で並べてコメントを付記してみよう。

まずは御三家。東京男子の私立御三家は昭和の昔から存在する呼称だ。開成、麻布、武蔵を指す。東大合格者数日本一をずっと続けている開成を知らない人はいないだろう。2023年で見ると開成は合格者148人。去年よりだいぶ減らしてしまったが、それでも圧倒的日本一である。校章が「ペンは剣よりも強し」なのも印象的だ。まあ、ふさわしい。オーソドックス、オールマイティというイメージだ。なおこれまでは、「開成は総理を出したことがない」というジンクスがあったが、岸田文雄総理の誕生でそのジンクスも崩れ去った。

次に麻布。古くは橋本龍太郎や福田康夫など総理大臣も輩出しているし、官界財界にも極めて広いネットワークを持つ名門中の名門である。2023年の東大合格者は78人。堂々の全国4位である。筆者の知人にも麻布OBはたくさんいるが、個性あふれる天才型・センス型人間が本当に多いなあと、感心してしまうレベルだ。六本木と渋谷に挟まれ、近くには諸外国の大使館も多数あるというハイセンスな港区で育つと、そうなるんだろうなあという感じだ。

一歩後退してしまっているのが武蔵。武蔵といえば、同名の都立武蔵高校もあるので紛らわしい。ちなみに都立のほうもけっこう優秀である。私立武蔵は古豪としてハイクオリティであったのだが、ここ最近ちょっと元気がない。とはいっても21人東大に合格させているのはすごいことなのだが。ともあれ、後述する新御三家の躍進に対して守勢に転じているという印象はある。静かで上品で知的な人が多かったなあという感じ。

そして20年ほど前から全盛期を迎えているのが新御三家という勢力だ。全て私立で駒場東邦、海城、巣鴨の3つを指す。東大をめぐる争いでは、いまや主役級にいるといっても過言ではない。新御三家筆頭が駒場東邦。「こまとう」とみんな呼んでいる。新御三家の中ではダントツで、入学するのが難しい。2023年の東大合格者数は72人で堂々8位。東大駒場キャンパスのすぐ近くにあるので、場所の雰囲気もいいし、早くから東大を間近で意識できるのが有利だ。駒場東邦中の入試問題は、すでにミニチュア東大問題のような記述式である。東大合格者養成に自信を持っている様子が伝わってくる。OBは面白い、明るい、快活な人が多かった印象だ。

大都会新宿…のすぐとなり大久保にあるのが海城。2023年は43人で13位。もともとは海軍予備校として設立された経緯があるので、保守的・固いというイメージはある。進学校化したのが比較的新しい、まさに新参勢力なので、現在進行形で活きのいい人材を輩出しているイメージがある。東京の北東部、やや田舎めいたお地蔵さんの街にあるのが巣鴨。中堅の進学校というイメージかな。2023年の東大合格者数は3人であり、復活が望まれるところだ。

女子にも御三家がある。人気抜群、不動の御三家。桜蔭、雙葉、女子学院。大学受験の結果だけで言えば筆頭は圧倒的に桜蔭。ただただ優秀、仰ぎ見る天才たちの集合体。日本一の女子校・桜蔭中に合格するってある意味東大より難しいとまで感じてしまうレベルだ。2023年の東大合格者数は72人で8位。堂々のトップ10入りである。

新宿でJR中央線快速に乗り東へ向かうと、最初に停車するのが四ツ谷駅。その四谷にあるのが雙葉。四谷というのは四谷怪談の四谷である。JR四ツ谷駅のすぐ東に雙葉があるのだが、そのすぐ南に上智大学もある。で、近くにたいへん立派な教会も立っているので、街全体がカトリックな雰囲気で、西洋のようである。そんな環境で学生生活を送れること自体が素晴らしい。2023年は東大に12人合格で57位。

JGの愛称で親しまれているのが女子学院。普通名詞+普通名詞で固有名詞かよ?と思われるかもしれないが、東京では燦然と輝く特別な名詞である。所在地は一番町。四谷から東へ歩き、皇居を目指していくと到達する番町・麹町エリアだ。江戸時代は大名の武家屋敷が並んでいた場所。そこから南下すると紀尾井町→永田町。まさに日本の中心部である。エグゼクティブな場所に位置するJGは2023年に東大27人合格で24位。さすがである。

ちなみに永田町から西へ行くと赤坂→六本木→麻布→青山→渋谷。途切れない都会が続く東京。首都はでかい!と思う。

渋谷から南西方向へ電車を走らせよう。横浜市~川崎市ラインの海岸沿い神奈川県も、ある意味東京のようなものなので、東大合格者は毎年ごっそり出している。神奈川男子御三家は栄光、聖光、浅野。湘南や太平洋の匂いがしてくる。栄光が46人で11位、聖光78人で4位!浅野は43人で13位。東大生のボリュームゾーン、という感じである。なお、神奈川女子にも御三家は有り。横浜雙葉、横浜共立、フェリスだ。東大合格者数自体は順に2人、2人、9人。

東大合格者ランキングについて、ここ10年くらいの大きな変化といえば、渋渋・渋幕の大躍進や筆者も知らなかった神奈川の県立高校・横浜翠嵐の快進撃などが挙げられよう。また、100年前から名門だった都立日比谷がいつの間にか大復活しているのも驚いた。

東大に限らず、大学合格者ランキングというのは本当に興味深いものだ。今どこの高校に勢いがあるのか。新参勢力と古豪との戦いなど、話題も関心も無尽蔵である。次回はまた、九州を主役に執筆してみよう。

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