「その9」では、旧帝大入試の共通テストと2次試験比率につき述べました。そうしたところを目指す受験生同士の戦いぶりを見ていると、文理問わず、英語・国語はできて当たり前なんだな、と感じます。ほとんど差は付かないのが現実です。そりゃそうですよね。修辞なんてものは文化人・教養人としての前提ですから。ハイレベルな戦いにおいて、決定的な優劣がつくと考えるほうがおかしい。
2次でどの科目を重視して勉強するのか、というのは大きな悩みどころです。作戦の帰趨を握るのはもちろん数学でしょう。「算数と数Ⅲ」で述べたように、数学は科目の王様ですから、文系にとって厄介なのは当然のこととして、理系の人にとっても最も厄介な科目であることは間違いないのです。
したがって、取りうる方策としては、
作戦1:数学を重視する、
作戦2:数学を捨てる、という2つが想定されます。
一橋大学経済学部をはじめとして、配点的に2が絶対通用しない大学・学部は1にするしかありません。そもそも理学部系や経済学部系は、大学生になっても毎日のように数学を扱わなくてはならないのですから、数学ができなければ目指せない、というのは自明です。
作戦2が通用する大学は意外と多かったりします。東京大学でも、文Ⅲだったら数学1問完答できればギリギリなんとかなってた時代もありました。数学はある程度取れたらラッキー、ってな感じで妥協しといて、他の科目を猛烈に勉強して高得点を取って勝つという戦略もありえたわけですね。
本番試験における数学は、「高値安定を阻んでくる」という特性も挙げられます。どんなに数学が得意な人でも、失敗してしまうことがあるし、本番の緊張感の中で一度崩れ始めたら止められない、ということになるのです。同じ理系科目でも、化学なんかはそうはなりません。理論化学・有機・無機と分野がさまざまで、試験時間の途中でも気分転換できるので、極限状態においても実力が正当に反映されやすいし、高値安定が可能な科目といえます。
同じ旧帝大でも、試験問題における数学の質が違いすぎるなあ、というのは昨年おおいに感じました。感覚的には、
東大>>京大>>>>>>>>それ以外
という感じ。
見た瞬間にまったく手も足も出ない、という問題はほぼ無いのですね。阪大や九大は。なので、高値安定が比較的狙えるため、どの大学であっても最難関学部である医学部医学科の合格可能性が出てくるわけです。
結局、東大理Ⅲが難しい理由はそこにあります。数学の高値安定が約束されない中で、前期試験一発勝負における高値確保を達成せねばならないのですから。そこにBETできるかどうかの度胸が問われていることとなります。
以上、数学をめぐるマクロ的な戦略について述べました。ミクロ的な話についてはまた次回。