5月29日付朝日新聞の一面トップに「増える公立大 設置100校」の見出しが大々的に踊っていた。北海道の私立旭川大学が旭川市立大に改組されたことにより、ついに100校目の公立大学が誕生したということである。私立大の公立化は12校目だそうだ。2016年に誕生した山陽小野田市立山口東京理科大学なんかは、熊本からの受験生も多くポピュラーである。
普段我々は「国公立大学」という言葉を何気なく使っているが、国立と公立では幾分性格が異なるということに注意せねばならない。公立大へも国からの予算は出ているのだが、全額が直接大学に行くわけではない。自治体がかなり自由に運営できるのである。
公立大の長所としては、
・地元密着なので、社会に出て働くうえで不可欠な地元人脈を作ることができる。
・比較的、就職に強い資格の取得や実地研修が充実している。
・安い。国立と同額の授業料から、さらに地元出身者は割り引かれることも多い。
などである。逆に短所としては、
・自治体の行政に左右されてしまう。特に個性的な首長が現れた場合は、良くも悪くも振り回されてしまう。
・授業料の減免が無い他県人は、なんだか不公平感を抱いてしまう。
・多くの場合、総合大学ではない。やりたい学問が見つからない可能性も大きい。
という感じだろうか。長所と短所は表裏一体であり、大阪公立大学の事例のようにドラスティックな改革案が好評を呼ぶこともあれば、東京都立大が首都大学東京になって、また東京都立大に戻ったように、名称まで簡単に変えられてしまう弊害もある。
2023年に生まれる子供の数は、ついに70万人台になりそうだ。大学の生き残り競争も苛烈を極めている。そもそもが定員割れしているような私立大を無理に公立化することは、「退場すべき大学を税金で延命」(朝日新聞)することを認めているようなものだ、という批判も根強い。しかし一方、公立大の存在ありきで街づくりをしているのであれば、教員や学生が街の活性化に果たす役割を続けてもらわねば困るという事情もわかる。いずれにせよ、大学を選ぶ側の我々自身が、しっかり情報収集して大学の教育内容を見極めていくことが必要だろう。