東進衛星予備校は、インターネットを経由した映像授業となっている。ここ熊本において生の講師を揃えるのが難しいとか、コスト的に仕方ないとか、そういう理由による面もあるのかもしれない。
だが怪我の功名といおうか。ここ最近、映像授業の利点が見直されてきている。あまりにも東進衛星予備校側に肩入れした論理と感じられるかもしれないが、映像授業は「考える余地を挟ませず、叩き込む」ことになり、これが良い作用をもたらすのだ。特に、1.5倍~2倍速再生の効果は絶大である。「倍速再生 脳」なんかで検索してみたら、エビデンスは山ほどヒットする。
倍速再生による学習に一度慣れてしまうと、等速再生は間延びすると感じてしまうのだ。映像のみならず、必然的にライブ授業へも違和感を抱いてしまう。ライブ授業(すなわち等倍の授業)は、ちょっとした講師の「間」だったり、外部からの雑音やイレギュラー事象などの繰り返しで、じりじり集中力が下がっていってしまうのである。
ライブ授業って、実は受け身だ。2時間も3時間も、だらーっと講師の言うことを聞いているにすぎないし、言われるがまま板書をノートに写しているにすぎない。授業を聞きながら熟考し、己に反芻するほどの力があるのなら別だが。しかしそれであるならなおさらそんな授業いらないし、でとにかく授業は無駄とはいわないまでも、ある一定程度以上の生徒にとっては、冗長性を禁じ得ないものいうことになる。
筆者は大学時代、国家公務員試験対策のため法律系の予備校に通っていたことがある。場所は東京・お茶の水。ライブも映像も選べたにもかかわらず、あえて映像のほうを選んだ。その頃はインターネットなんかまだまだ黎明期だったので、わざわざ校舎へ出向き、受付のお姉さんに紙を渡して、DVDを借りて再生する方式だったので、現在の感覚からすればかなり面倒だったのだが、それでも当時としては画期的だなあと好んで使っていた。わざわざライブ授業の場所と時間帯に自分を合わせるのではなく、自分の都合がつく時間を自ら構築し、さっさと受講してインプットし、1階の吉野家で牛丼でも食べてさっと帰宅し、また自宅で勉強すればよいではないか、と思ったのだ。本当にその通り、計画的に勉強できた。
資格予備校では、難関資格に短期合格する人ほど、1.5倍速で学習している、というのは常識だった。カセットテープの時代からやってる人もいたくらい。等速で1回より、2倍速で2回見たほうが覚えやすいのではないだろうか。ここで理解能力はあまり関係ない。倍速で聞いて、そしてじっくり考える、その考えるという行為が重要なんだろうな、と思う。
試験対策の勉強というのは、大学受験で終わりなんかでは、ぜんぜんない。大学生になってからも試験は続く。始まりにすぎない。なので、早いうちに映像授業そして倍速インプットに慣れておいた方がよいのは間違いないのだ。筆者は今でも、気が向いたらネットで講義(プログラミングスキルとか)を購入し、パソコンを使ってインプット学習したりもする。
余談だが、倍速の密度でいえば、実は読書こそ至高なのだ。速読の上手い人ならば、それこそ2倍速以上のインプット密度でたくさんのことを学ぶことができる。映像の限界を超えられる。あたかも、太陽光よりも石油のほうが何倍もエネルギー比重が高いように。一周回ってアナログの強さを再認識し、本稿を締めたい。