九大には受かりそうな生徒が、背伸びして阪大を目指す必要性があるのだろうか。これは、ここ九州において受験指導に携わる者ならば避けて通れない、永遠の課題である。

まず、「背伸び」がどれくらいの背伸びになるかだ。入試における難度を東進偏差値2024最新版で比較してみよう。

文系は阪大の62がMAX。文、法、経済、人間科学の各学部が62である。一橋で一番入りやすい経済学部と同値であり、東京外大の人気学部あたりがライバルとなる。一方の九大は法と経済が60。偏差値において2の差は大きい。60だとお茶大や筑波、横国あたりがライバルとなる。

理系は医学部という特殊な存在を考える必要がある。阪大医(白い巨塔のモデルである)は66で九大医が65。東大の理Ⅰや理Ⅱに匹敵する数値だ。阪大の理学部や工学部は61が大勢。片や九大は59が趨勢。ここでも2の差がある。理系学部においては、九大と神戸大がライバルとなる。千葉大、農工大、都立大も同値もしくはすぐ下に控えており、その影がちらついてくる。

阪大の理系学部も高い数値ではあるのだが、横市医、阪公医、筑波医らの65と大きく差があること、さらには熊大医、長崎大医、鹿児島大医らの63にも差を付けられているため、やはり医学部は別格だなという印象を持たされてはしまう。

いずれにせよ、阪大vs九大の入るときの差は、かなり大きいと考えて良い。一年とは言わないまでも、半年浪人して追いつくくらいの差だ。

では卒業時はどうなっているか。就職先においては九大も阪大もずらりと一流企業が並ぶ。とくに理系においては研究室経由で大手企業にほぼ確実に就職できるため、明確な差を見出すのは難しい。差があるとすれば大学の立地か。福岡市にある九大は、どうしても関西や関東での就職活動に不便を感じる。とくに文系の場合は、多数の企業を求めひんぱんに足を運ばねばならないので、この立地の差が及ぼす不利益は想像以上に大きい。

文系の代表的な資格試験である司法試験合格者数においても、差は大きい。阪大ローが合格者数51人であるのに対し、九大ローは22人。実に2倍以上の差がある(2022年)。法曹資格を目指すのならば、背伸びすることに価値はありそうだ。

旧帝大の成立過程において、最初にできたのが東大。その次にできたのが京大。京大から暖簾分けしてできたのが九大。阪大も、九大と同時期に作られているので、格としては互角のはずだった。現在生じている九大と阪大の差は、やはり立地の差に起因するということに尽きるだろう。特にここ最近の九大は、糸島方面に引っ込んでしまったこともあり、良くも悪くも「福岡市の旧帝大」になっている感は否めない。九州内では無双を誇る大都会福岡市とはいえ、関西三都を合わせた強固な人口・産業・経済圏と比べれば、心もとない規模だ。九大がさらに飛躍するには、福岡市を超えた価値を発信していく必要があろう。

受験生の戦略としては、確実性を求めるなら九大合格に全力を尽くすべきだ。充分に、魅力的な大学生活と将来が待っている。多少合格可能性を減らしてでも構わないほどの、何かしら特別な魅力(人それぞれ、あるだろう)を見出せるのならば、阪大に挑戦すべきだ、というのが本稿の結論である。

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